心の病気の紹介
統合失調症は、幻聴や被害妄想といった症状が特徴的な疾患です。そのため家庭や社会で生活を営む機能が障害を受け、さらに「感覚・思考・行動が病気のために歪んでいる」ことを認めることが難しくなりやすい(病識がない)、という特徴を併せもっていま す。
多くの精神疾患と同じように慢性の経過をたどりやすく、その間に幻覚や妄想が強くなる急性期が出現します。
新しい薬の開発と心理社会的ケアの進歩により、初発患者のほぼ半数は、完全かつ長期的な回復を期待できるようになりました(WHO 2001)
「憂うつである」「気分が落ち込む」などと表現される症状を抑うつ気分といいます。抑うつ状態とは抑うつ気分が強い状態です。そして「行動が思うようにとれない」「これまで関心があったことに興味をもてなくなってしまった」「それでも焦りは感じている」など症状が加わると抑うつ状態は重症であり、うつ病と呼びます。
双極性障害は昔は「躁うつ病」と呼ばれていましたが、現在では「うつ状態」「躁状態」の両極端な病状が起こるという意味の「双 極性障害」と呼んでいます。双極性障害は、躁状態の程度によって二つに分類されます。
家庭や仕事に重大な支障をきたし、入院が必要になるほどの激しく高揚した状態を「躁状態」といいます。一方、はたか ら見ても明らかに気分が高揚していて、眠らなくても平気で、ふだんより調子がよく、仕事もはかどるけれど、本人も周囲の人もそれほどは困らない程度の状態 を「軽躁状態」といいます。
うつ状態に加え、激しい躁状態が起こる双極性障害を「双極I型障害」といいます。うつ状態に加え、軽躁状態が起こる双極性障害を「双極II型障害」といい ます。 双極性障害は、薬でコントロールすれば、それまでと変わらない生活をおくることが可能で
すが、治療を怠ると何度も躁状態とうつ状態を繰り返し、その間に人間関係、仕事や家庭といった人生の基盤が大きく損なわれてしまいます。
このように双極性障害は、時にうつ状態では死にたくなるなど、生命の危機をもたらす一方、躁状態では気分が高揚に伴った行動が結果として社会的生命を脅かすことになると認識されています。
アルコール依存症をひとことでいうと、「飲酒をはるかに優先させ、家族、仕事、人間関係が崩壊していしまうこと」です。具体的には、適切な飲酒量が摂れない、禁断症状がみられる、健康問題等の原因が飲酒とわかっていながらやめられない、などの症状が認められます。 WHO作成によるICD-10の診断ガイドラインは下記の通りです。 その中で2の典型は連続飲酒です。4は酔っぱらいたいための酒量が以前より明らかに増えているか、または、同じ量では効果が明らかに下がっている場合で す。6では、本人が有害と気づいているにもかかわらず飲み続けていることを確認します。
アルコール依存症のICD-10診断ガイドライン
アルコール依存症(alcohol dependence syndrome)のICD-10診断ガイドライン
過去1年間に以下の3項目以上が同時に1か月以上続いたか、または繰り返しが
出現した場合
1、飲酒したいという強い欲求か強迫感
2、飲酒の開始、終了、量に関してコントロールができない
3、禁酒や減酒したときに禁断症状が出現
4、耐性の証拠
5、飲酒にかわる楽しみや興味を示さず、飲酒の時間や効果から回復にかかる時間が延長
6、明らかに有害な結果が起きているにも関わらず飲酒
PTSDとは外傷後ストレス障害のことです。
生死にかかわるようなの危険にあったり、死傷の現場を目撃したりするなどの体験によって強い恐怖を感じ、それが記憶に残ってこころの傷(トラウマ)となり、何度も思い出されて当時と同じような恐怖を感じ続けるという病気です。
こうした体験の後では、誰しもが、繰り返しそのことを思い出したり、恐怖を感じたりするものですが、普通は数週間のうちに恐怖が薄れ、記憶が整理されて、
その体験が過去のものとして認識されるようになります。PTSDでは、トラウマの記憶が1カ月以上にわたって想起され続け、生活面でも重大な影響を引き起こしていることが特徴です。
強迫性障害という病気は強迫観念と強迫行為に特徴づけられます。
強迫観念は無意味ないし不適切、侵入的と判断され、無視や抑制しようとしても頭から 離れない思考やイメージなどで、強迫行為はおもに強迫観念に伴って高まる不安を打ち消すための行為で、そのばかばかしさや、過剰であ ることを自ら認識しつつも、駆り立てられる様に行う行為です。
具体的には、トイレのたびに「手の汚れ」を強く感じ、それをまき散らす不安から執拗に手洗いを続けたり、泥棒や火事の心配から、外出前に施錠やガス栓の確認を切りがなく繰り返したりします。
パニック障害は、パニック発作 、予期不安 、広場恐怖が 3大症状があります。中でもパニック発作、それも予期しないパニック発作がパニック障害の必要な症状であり、予期不安、広場恐怖はそれに伴って二 次的に生じた症状といえます。そして症状によるQOLの低下が、この障害のもうひとつの特徴です。
パニック障害かどうかを決めるための第一の条件は、「予期しない発作」であることです。
「パニック発作」はパニック障害の特徴的な症状で、急性・突発性の不安の発作です。 突然の激しい動悸、胸苦しさ、息苦しさ、めまいなどの身体症状を伴った強い不安に襲われるもので、多くの場合、患者さんは心臓発作ではないか、死んでしま
うのではないかなどと考え、救急車で病院へかけつけます。しかし症状は病院に着いたころにはほとんどおさまっていて、検査などでもとくに異常はみられませ ん。そのまま帰宅しますが、数日を置かずまた発作を繰り返します。
パニック障害では通常は「また発作が起こるのではないか」という心配が続くことが多く、これを「予期不 安」といいます。発作を予期することによる不安という意味です。「心臓発作ではないか」「自分を失ってしまうのではないか」などと、発作のことを あれこれ心配し続けたり、口には出さなくても発作を心配して「仕事をやめる」などの行動上の変化がみられる場合もあります。いずれも、パニック発作がな い時(発作間欠期)も、それに関連した不安があり、1ヶ月以上続いているということを意味しています。
「広場恐怖」
というのは、パニック発作やパニック様症状が起きた時、そこから逃れられない、あるいは助けが得られないような場所や状況を恐れ、避ける症状をいいます。 そのような場所や状況は広場とは限りません。一人での外出、乗り物に乗る、人混み、行列に並ぶ、橋の上、高速道路、美容院へ行く、歯医者にかかる、劇場、
会議などがあります。広場というより、行動の自由が束縛されて、発作が起きたときすぐに逃げられない場所や状況が対象になりやすいことがわかります。
パニック障害ではほとんどの患者さんがこの広場恐怖を伴っていて、日常生活や仕事に支障を来す場合が多くみられます。サラリーマンであれば電車での通勤や 出張、主婦であれば買い物などが、しばしば困難になります。誰か信頼できる人が同伴していれば可能であったり、近くであれば外出も可能であったりします
が、その結果、家族に依存したり、行動半径が縮小した生活を余儀なくされる場合が多く、広場恐怖を伴うパニック障害によるQOL(Quality of Life, 生活の質)の低下は、見かけ以上に大きいといわれています。
認知症とは「生後いったん正常に発達した精神機能が慢性的に減退・消失することで、日常生活・社会生活を営めなくなる状態」をさします。
今日、認知症の診断に用いられる診断基準のひとつに、アメリカ精神医学会によるDSM-IVがあります。各種の認知症性疾患ごとにその定義は異なりますが、 共通する診断基準には以下の4項目があります。
DSM-Ⅳによる認知症の診断基準
認知症の原因としてはアルツハイマー病が最も多いとされますが、様々な疾患が認知症の原因になりえます。とくに、中枢神経系に病巣をもつ次の疾患が代表的です。